
川端裕人著
中公新書ラクレ
780円(税抜き)
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PTAの実態を知らない子育て中のお父さんには必読の書。触らぬ神に祟りなしと距離を置くのか、はたまた子供のためには積極的に関わった方がいいのか、この本を読んでから決めても遅くはない。団塊の世代で、学校との関係をすべて母親任せにした罪深い男性陣も、これを機会にその実態を覗いてもらいたい。
PTAという不思議な組織を巡っては、最近こんな事件があった。東京都の公立高等学校PTA連合会の元事務局長が、加盟136校のPTAから集めた積立金約501万円を着服していた。8月末には大阪で、PTA会長を務めていた男性が、やはりPTA会費約110万円を私的な飲食代に流用していた。
私が公立中学の校長をしていた5年間にも、ある学校で卒業アルバムのための積立金が会計担当をしていた保護者により使い込まれていることが判明した。子供を傷つけたくないという学校側の配慮から校長がポケットマネーで穴埋めし、親が少しずつ返金することで表沙汰にせずに片をつけたと聞く。なんだかなあ、と思ってしまう。
全国で1000万人超もの会員を擁する最大級の規模の民間団体の話だ。
役員選出の儀式がいかにもめるか、この本ではこう表現されている。
水を打ったように静まり返る教室。ついさっきまで自己紹介と先生の談話で和やかだったのに、「それでは、PTAの委員の選出をしたいのですが…」と先生が切り出すや否や、黙りこくるお母さんたち。目線は下。気の優しそうなお母さんが沈黙に絶え切れず「あの、私…」なんて発言しようものなら、やり手のお母さんが「いいんじゃない、あなた、やったら?」と押し切ってクラス中から拍手が起こり、「エッ、エッ」とご本人が目を白黒させているうちに決まってしまう。
もともと戦後の学校経営を民主化するために、GHQ(連合国軍総司令部)が教育委員会とセットで日本に押しつけた置き土産である。そろそろシステムを見直すタイミングにきている。
だから、私は5年目の年に、東京都杉並区立和田中学校のPTAを上部団体から分離し、地域のボランティア組織である「和田中地域本部」と合体させようとした。その方が、我が子かわいさのあまりモンスターと化す親を牽制できるし、教員とともに学校を共同経営していく意識が保護者にも増すと考えたからだ。こうすることで余計な事務は減り、会長が楽になる。結果、保護者と地域社会の関わりも厚くなる。
著者の提案も十分に具体的なので参考にしてほしい。
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