
山田玲司著
光文社新書
700円(税抜き)
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「みんなと同じ」が求められるこの国で、「みんなと違う」自分らしい人生を送る方法はあるのか? この本のテーマである。答えを先に言ってしまおう。
自分の中の「非属」の才能をひたすら信じること。卑俗ではない。従来のカテゴリーで分けてもらわないようにすること。何物にも属さないという意味だ。
著者は漫画家。数多くのオンリーワンな人たちの話を聞いて、共通するのは、子供の頃からとにかく学校が嫌いだったことだという。だから、学校嫌いは才能のサインだと言い切る。オノ・ヨーコ氏もそのうちの1人で、インタビュー中に著者は「非属」という概念を思いついた。なるほど、彼女にはそんな雰囲気が漂う。
学校や家庭教育のあり方には手厳しい。「日本の学校で一番学ばされることは、『立ち位置の取り方』だろう」。
そんな学校に子供を入れて、やれ名門私立に、もっといい大学に、ブランド会社にと駆り立てる親は、自分の子供の背中に「私は凡人」というタグを張りつけているのと同じと喝破する。
「戦後生まれの親たちは、群れることで幸せを実感できる幸運な時代を生きてきた。(中略)そんな世代の価値観は何かといえば、次の一言に集約される。『いかに“良い群れ”に属すか』」。だから、子供たちには、良い群れに属さないと幸せになれないという親からの呪縛がかけられているのだ。
では、どうすれば「群れと一緒じゃないと怖い」という呪縛が解けるか? 著者は、後半にいくつもの事例を挙げて手ほどきしてくれる。
まず、情報が少なければ少ないほど、制約が多ければ多いほど、想像力は豊かに育つことを指摘する。これには評者も同感だ。昨今の親は「私立の方が学力的に安心だろう」とか「学校には全館エアコン設置が理想だ」などという居心地論を重視する。しかし、居心地の良い環境は子供たちから生きるチカラを奪っていく。「何となくつけているテレビ」とか「寂しければ携帯電話」とかで自分をごまかすのもやめなさいと説く。これも私が朝礼や保護者会でいつも諭していたことだ。
とはいえ、「非属」を貫くことは、甘んじて孤立を受け入れることでもある。また、それは自分勝手なミーイズムとも違って周囲への貢献が求められる。テレビで人気者の魚オタク「さかなクン」の生き方が参考になる。「変わっている部分」がみんなに喜びを与えたり、何らかの利益をもたらしたりすることで歓迎されているからだ。
コツは「和を持って属さず」なのだ。
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