
渡邊奈々著
日経BP社
1600円(税抜き)
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社会の流れに鋭い読者はもう前作をお読みかもしれない。2005年に出版された『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』である。著者はニューヨーク在住の写真家。
第2弾の本作では、愛情に飢えた子供たちへの里親プログラムを開発した海外の起業家など、世界各国で繰り広げられる活動を紹介した。
「社会起業家」という言葉をグーグルで検索すれば133万件もヒットするし、アマゾン・ドット・コムでチェックすれば、本もいろいろ出ている。既に社会的に認知された言葉になった。
「そもそも米国に暮らす私が、社会をより良く変えるという生き方を選んだ人たちを日本に紹介しようと思ったきっかけは、バブル経済崩壊の後、東京に帰るたびに電車の中などで見かける人たちの哀しく暗い表情が気になって仕方なかったからでした」という。表面的に大企業の景気は上向いているように感じられるが、いまだにこの状況は根っこのところで変わってはいないということか。
彼らは、ビジネスとして社会的な困難を克服する事業に名乗りを上げた。 今回、取り上げられた日本人は5人。世界が認めた人道支援NGO(非政府組織)「ピースウィンズ・ジャパン」の大西健丞氏、出稼ぎ移民向け少額融資銀行「マイクロファイナンス・インターナショナル・コーポレーション」の枋迫篤昌氏、老朽社宅転用型老人ホーム事業を成功させた「伸こう福祉会」の片山ます江氏、フリーター向け短期滞在施設を運営する「エム・クルー」の前橋靖氏。そして、病児を預かる在宅保育事業NPO法人(特定非営利活動法人)「フローレンス」の駒崎弘樹氏である。駒崎氏については彼自身の近著『「社会を変える」を仕事にする』(英治出版)を併せて読むことをお勧めする。
「そんな時代に生きる私たちは社会のほころびに気づきながらも『仕方ない』とあきらめてしまうか、あるいは、問題と向き合い解決策を考えて行動に移すか、ふたつにひとつの選択をしなくてはなりません」「そんな馬鹿げたことをするなんて、頭がおかしくなったんじゃないかと周りの人から冷笑され、奇人扱いされた人たちもいます」
でも、そんな人たちが世の中を変えている。私も教授陣に加わるNPOビジネススクール「アイ・エス・エル(ISL)」の野田智義氏も、こうした社会起業家を組織的に生み出す仕組み作りに動き始めた。日本が変わることを確信できる1冊だ。
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