
高城 剛著
集英社
1300円(税抜き)
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粗削りで、年配の読書家には耐えられないかもしれない。
著者は映像作家でDJ。デジタル時代の代表的クリエーターとしてカッコいい表現とライフスタイルを追求してきた。その彼が、今は火、木、土曜日をメールの日と決め、それ以外の日はメールを見ない生活をしている。テレビを見るのも10年以上前にやめたという。「9.11テロ」をきっかけに生活のパターンを、なるべく自然の中で暮らす「環境」重視型に切り替えたのだ。
ただし、流行りのスローライフではない。むしろ若者に広がるスローライフ的な考え方に対する警告だ。
「『地球環境は大変だ!』と騒ぐ人ほどスロー志向だが、大変ならスピード志向で問題解決に当たるべきだろう。(中略)今、我々に必要なことは、ハイスピードなトライ・アンド・エラーではないのか?」と著者は主張する。
世界中があっという間に温暖化に対応してアグレッシブに資源の確保や次世代技術にシフトチェンジしている時代に、日本はノンビリし過ぎているのではないかという警告なのだ。
「オーストラリアの人が大挙してニセコの土地を買っているのは、単にリゾートライフを楽しむためだけではない。実は温暖化に危機感を抱いている人たちは、日本に移住する準備を進めていると僕は見ている。(中略)水の豊かな日本に住んでいる僕らにとっては、何度聞いてもなかなかピンとこない真実なのだが、温暖化によって最も懸念されているのは水不足だ」。だから、世界中のウオーターマフィアが日本の水を狙っている、と。
ファッションや音楽は「南国化」がキーワード。「世界中暖かくなってしまったので、ここ10年ほどのファッションの流行といえば、パリやロンドンではなく、ハリウッドセレブの、あるいはロサンゼルス(LA)スタイルのカジュアルウエアが中心だ。ニューヨークやミラノよりも、気がつくとLAファッションである」「音楽の流行には時代の気分が大きく作用するので、南国化によって僕たちの気分も、今後ますます南下していくのだろうと僕は分析する。(中略)日本も『南国化』する」。
エネルギー自給率4%、カロリーベースの食料自給率40%の国で、しかも世界が水や食料を奪い合う時代に日本人がペースダウンして「スローライフ」を気取ったらどうなるか。米国でも先端を行く連中はアップルやグーグルを辞め、電気自動車のベンチャー企業や地熱発電の会社を立ち上げたりしているらしい。さて日本の若者は…。
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