堀江貴文著 光文社 1200円(税抜き)


 50代以上の読者には嫌われるだろう。5年後にも成長しているかどうか保証はない。しかし、プロ野球球団の買収劇では存在感を見せつけた。著者は、そのライブドアの社長である。
 「お金持ちと貧乏人は生まれたときから立場が違う」「国内に2つの国が存在するような経済状況が生まれてくる」「会社になにも貢献していないサラリーマンでも1000万円以上の給料をもらっているケースが多い。(中略)20代の若者は、こうした給料ドロボーのおやじたちを養うために就職している」「就職とは他人のコントロールの支配下に入るということ」「会社という組織を使って他人の能力を利用するべき」「人の心はお金で買える」
 こうした直言は確かに傲慢にも見える。ただ、著者はこの本の中盤でこうも言っている。商売の本質を知るには、まず気合いと根性でモノを1つ売ってみることだ。「営業しないと成奄ヘついてこない。売り上げはついてこない、利益はついてこない。口説かないと女はついてこないのとまったく同じです」と。
 インターネット関連のバブル企業のほとんどが破綻した後にも、彼は実際、生き残った。1日5000窒フメールを処理し、コスト削減の極限のアイデアを練りながら。
ライブドアのような無名の会社がのし上がろうとする時、創業者は必ず旧勢力からウサンくさがられ、持ち上げられてはこき下ろされて消えていくのが常だった。
 でも待てよ、と私は思う。すべてのエスタブリッシュも、昔は十分ウサンくさい若造ではなかったか。
 「火星に旅行する宇宙旅行会社が夢だ」とか「自分は死なないと信じている。タンパク質の合成がそのうち成功するから」というような発言に惑わされてはならない。営業して利益を上げ続けるという基本を外さぬ限り、彼には可能性があるからだ。
 かつて新聞を制したものがメディアの王となった。次はテレビ。そして、どうやら次がインターネットであることは自明だろう。
私の目には、ブロードバンド(高速大容浴jに早期参入した企業の息切れを待っているかのようにも映る。間に合うかどうか、それまで営業を続けられるかどうかが勝負の分かれ目だろう。
 「実は僕には子どもの頃両親にほめてもらった記憶がほとんどありません」。お前は天才だとさんざん褒められて育ったソフトバンクの孫正義氏とは正反対の教育を受けたという。さて、どちらの教育法に軍配が上がるのか。お母さんもお父さんも、注目の一戦だ。
(2004年12月20日号書評)
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