岡田斗司夫著 海拓舎 1500円(税抜き)


 日本では今、40秒に1組が結婚し、120秒に1組が離婚している。
 昨年離婚した26万組余りの内訳を見ると、結婚期間5年未満が前年より5000件増えていることに加えて、20年以上一緒に暮らした“熟年カップル”の離婚が、1985年に比べると倍増している事実もある。
 この本は、全く新しい家族論を提示した本である。
 「自分の気持ち」を何より大事にすることを善とする現代社会の中では、子育てが始まった瞬間から家庭は崩壊する運命にあると著者は喝破する。夕食の時間に家に帰ることなどあまりない大忙しのビジネスマンの中には、それでも旧来型の「父権」の存在に疑いを持たない方々もいるだろう。しかし、父親に無条件に父権を保証する時代は終わり、子育てをする妻が夫にどの程度の父権を与えるかの決定権を握る社会がやってきた。
 著者の主張はすさまじいばかりの家族経営論だ。「一夫一婦制」に基づいて核家族で子育てをすることには無理が生じてきているし、もともと「恋愛」「結婚」「子育て」と男と女には違う機能が求められるから、同じ2人が最後までこの事業を成し遂げるには無理がある。
 それなら、家庭内におけるリーダーシップは給料を運んでくるだけの夫ではなく現場をよく知り抜いた妻が取るべきなのだから、“不良債権化”した父権を早く家庭という組織からリストラし、「シングルマザー」を基本ユニや“父親”といった男性機能を使い分けるようにするとよい。つまり、女性を家庭という組織経営の社長に据えて、男性機能の徹底したアウトソーシングをせよということだ。
 著者自身はもともと週4〜5日は家族と夕食をともにする満点パパだったのだが、今は仕事場を寝床にして週3日家庭に窒、生活に切り替えることで健康な家族関係を維持しているという。離婚した私の友人も「ああ、こんなふうに考えればよかったのか!」と肩の力が抜けて楽になれたと語っている。
 社会が豊かになったことで必然的に起こった核家族化、自分の気持ち至上主義化、そして情報化によって崩壊の危機にさらされているニッポンの家族を救うのは、今や100万世帯を超えようとしているシングルマザーを核とした柔らかな“ネットワーク型”の家族像なのか。
 さて、あなたはこの本を余裕の笑みを浮かべながら反面教師として読み進むことができるだろうか。
(2001年10月22日号書評)
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