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組織を超えた個人と個人のネットワーク
進行中のプロジェクト報告

 
  住宅に「住まう」ことについて、土地を買って家を建てるのではなく、人が建てた家を賃借するのでもない、新たな道について提案したいと思います。
 英語では、買って100%所有することを「フリーホールド」、賃貸は「レント」(レンタルという呼び方の方が日本では馴染み深いかもしれません)と言います。
 さらに英国では、この二つの方法の間に「リース」という形式があるのです。日本の定期借地権に近いのですが、契約期間は日本のように50年という中途半端な期間ではなく100年。ですから誰かに転売して再流通させることもできるわけです。
 私が考えているのは「コーポラティブ・リース」という方法で、地主の土地に借り主が設計した家を建ててもらうというもの。建築費は借り主が建築協力金として拠出し、立ち上がったあとは地主の所有になる。この家に15年とか25年という双方が都合よいと思われる期間を設定して、借り主が借りて住むのです。
 建築協力金を大きくして建築費の大部分をまかない、月々のリース料を低くするか、反対に協力金を軽くして月々のリース料をしっかり払っていくかは、両者の資金的な事情によっていくらでもバリエーションがあるでしょう。
 借り主にとっては、自分の家族構成にあった新築の家を自分でオーダーして住むことができるのがメリット。ただし所有ではないので、自分の資産にはならず、担保に入れて銀行から借金することもできません。要するに、住まいというソフトを一定期間“徹底的に使用する権利”だけを買うわけです。
 一方、地主の側にも少なからずメリットがあります。この方法だと、空いた土地資産を駐車場にするより収入が多くなる可能性があり、また相続時の税務上も有利です。また上ものは自分の所有なので定期借地権より安心感があり、さらに家が契約期間を終えても使用に耐えるようなら、そのまま賃貸に回す資産として残る可能性も充分ありうるわけです。
 住宅の世界で「買うのか、借りるのか、それが問題だ」と常識に凝り固まってしまっていたところに、新たに現れた「コーポラティブ・リース」という住まい方。さて、あなたにとって家との心地よい“関係性”は、いずれの道にあるでしょうか。
 

   最近、住宅づくりの現場で、“コーポラティブ・ハウジング”という非常にリアルな動きが起こっています。“コーポラティブ・ハウジング”とは、ある場所に住まいたいと希望する複数の家族が建設組合を結成し、地主から直接土地を仕入れ、そこに共同でマンションや連棟方式による戸建て住宅を建てる方法です。
 土地を仕入れてから建物の設計を起こすため、マンションの場合でも自分に与えられた空間を思い思いに設計できます。この方法だと、通常のデベロッパーによる分譲とは違って、買い手を捜すために豪華パンフレットを印刷し派手な広告キャンペーンを展開したり、売れ残った場合の在庫リスクを見込んだりする必要がなくなるために、価格が下がるという魅力があるのです。
 一方逆に、その土地に住まいたい人自身が、自分たちで何度も会議を持ちながら互いの利害を調整していかなければならないという面倒くささがあります。例えば15世帯で東京の吉祥寺にコーポラティブマンションを建てようとする場合、希望者の募集が終わって土地の選定に目途がついたとしても、それから、どの階数の、東西南北どの面に15世帯分の部屋を割り当てるか、各部屋の価格(というよりは出資額)をどうするか、などを決め込んでいかなければなりません。ここまでは通常、のちに紹介するようなプロのコーディネーターに頼むことが多いのですが、そののち、何階のどの位置を自分たち家族の部屋とするか、各世帯の予算と希望をつきあわせて、全員が納得するまで話し合う必要があります。
 もともと200年前のイギリスで始まったといわれるこの方式は、ドイツやスウエーデンでは、年間建設戸数の10〜20%。日本でもすでに6000戸を超えるコーポラティブ住宅が大都市圏を中心に建設されています。
 有名な例としては、京都の宇治市に造られた「あじろぎ横丁」と、同じく京都の洛西ニュータウンに建設された「ユーコート」があります。

“あじろぎ横丁”
・所在地/京都市宇治市木幡西浦
・建築主/あじろぎ横丁建設組合、
 住宅・年整備公団
・施工/大橋組
・設計期間/1981年3月〜1982年9月
・施工期間/1982年10月〜1983年3月
・敷地面積/約3000m2
・建築面積/1002.59m2
・延床面積/1882.64m2
・建ぺい率/33.41%
・容積率/62.75%
・住戸数/2戸1 9棟 17戸+集会所
・用途地域/住戸地域
・規模/2階 
・構造/木造枠組壁(2×4)工法

「これからの集合住宅づくり」
(延藤安弘著 晶文社)より

◇コーポラティブ・ビレッジ方式の家造りが
新しいコミュニティと街並みを創る


 「あじろぎ横丁」には3000平米の土地に2戸連棟の戸建て住宅(イギリスではこの方式が主流でセミ・デタッチ・タイプと呼ぶ)が建ち、17世帯が入居しています。住民自身の手で敷地内に井戸を掘り子供が水遊びできる池が造られ、70種1000本の木が植えられました。各世帯の庭には境界を造らず共用のスペースを豊かに保ちながら、子供たちの安全のために車は入れないことにしています。毎月一度日曜日の朝7時から2時間、住人の全員参加による緑の手入れが行われているそうです。
 一方「ユーコート」は典型的なコーポラティブ型のマンションで、住都公団がもっていた3300平米の土地を譲り受け、48世帯がおのおのの好みでデザインした住居に住むことを可能にしました。最上階の65平米の家には「いろり」を配したリビングまで登場。建築の過程を通じて、マンション全体のネーミング、U字型の建物に囲われた共有の庭をどのようにデザインするか、あるいはお互いの自由を最大限尊重しながらも、なおかつ他人に迷惑をかけないようなルールをどのように定めるか、などなど、何度も何度もコンセンサスを得るためのミーティングが重ねられました。
 もちろん入居後にも議論の種は尽きません。例えば共有の庭で小さな子が蜂に刺される事故があったとき。理事会で蜂の巣を除去することを議論している最中に、あるお年寄りから「危ないものを取り去ってしまうのは簡単だけれど、そういうことも自然の一部であり、自然の危なさも含めて体験することが子供たちにとってより大切なことではないか」という意見が出され、結局蜂の巣を残すことにしたというエピソードがあります。
 住人たちが自ら、「その土地にもっと豊かに住まうにはどうしたらいいか」という知恵を出し続けていく限り、このような物語はつきることがありません。そして物語は語り継がれ、住まう人の土地への愛情を育みながら、不動産としての地域全体の資産価値を維持・上昇させることにも貢献しているのです。まさに、コーポラティブ手法による新しい“ビレッジ”(共同体)がここに成立しているわけで、私はこのような複数の住民主導によるミニ開発を「コーポラティブ・ビレッジ」型の開発と呼びたいと思います。
 この辺りのエピソードに興味のある方は、延藤安弘氏の描く『集まって住むことは楽しいナ』(鹿島出版会)と『これからの集合住宅づくり』(晶文社)を読まれることをお薦めします。

 東京でも、コーポラティブ型のマンションの開発を専門に手がけ、既に13棟(1棟はだいたい13〜18世帯で構成される)の建築実績のある「都市デザインシステム」というコーディネーターが、今まさに発展途上です。バブルがはじけて塩漬けになっている都市部の300〜1000坪程度の土地で、「このへんに住まいたい人、この指とまれ!」という組合づくりからスタートする『コーポラティブ・ビレッジ』型のミニ開発を促進することが、“都市の空虚さ”という問題を根幹から解決する最良の手だてだと、私は考えています。
 そこに住まおうとする動機付けの高い人々が自らの意志で開発すれば、満足感が高いことは言うまでもありませんし、さらに戸建てであっても屋根や外壁などデザイン基調を統一した街造り・横丁造りが可能になるために、街並みが美しく保てるという、地域にとっての大きなメリットもあるでしょう。
 コンセンサスづくりはけっこうタフな作業ですから、時に仲間割れのリスクもあるかも知れません。しかし、それを乗り越えていった先に物語が生まれ、土地と住まいの“ソフトの価値”が増殖してゆくのです。何より子供たちは、大人たちがコンセンサスをかたちづくろうとする、その背中を見ながら、実行プロセスへ子供たち自らの参画を通して、“社会の実相”を学ぶことができるのではないでしょうか。

(NTTデータPR誌『コンセンサス・コミュニティ』2号('99/10月発行)より)


※コーポラティブ・ハウジングに興味をお持ちの方は、「都市デザインシステム」のホームページへ。住まいづくりの詳しい流れ、現在 進行中のプロジェクト、新規募集のご案内など、ご覧いただけます。


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