よのなかフォーラム
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タイトル あすなろ物語
投稿日: 2020/01/05(Sun) 01:11
投稿者USA

『あすなろ物語』(新潮文庫)井上靖

明日は檜(ひのき)になろうなろうと思っていて、ついに檜になり得ない翌檜(あすなろ)

このフレーズが小説の骨格となっております。
主人公の鮎太の幼少期から青年期までを描いた物語なのですが、その成長の過程で鮎太は様々な人と出会います。

幼少期には翌檜の木の下で無理心中を図った2人の男女に出会います。その男性は大学生で鮎太は勉学面において多大な影響を受けていました。もう一方の女性は遠い親戚にあたり鮎太はその女性に少し惹かれるものがありました。そんな因縁浅からぬ2人が何者になることもなく翌檜の木の下で死を遂げるのです。

また鮎太は高校生の時に3人の親友に出会います。鮎太を含めた4人組はある女性達に恋をするのですが、大学生になった鮎太達はその女性達に振り向いてもらうためにもいつか檜になりたいともがきます。
一人は左翼活動家として逮捕され新聞一面に掲載。
一人は戦争の召集令状を受け戦死。
一人は海外留学。
残る鮎太は未だ檜になろうとすらしていない、つまりは翌檜にすらなっていない状態です。
そんな鮎太にも召集令状が届きます。戦地に赴く鮎太は周りがバタバタと死にゆく中で生き延びます。

帰還後、鮎太は新聞記者となります。そこでも出会いがあります。しかし時は戦中。だんだんと「翌檜」どころではなくなり明日生きることだけでも精一杯になっていきます。

古典チャレンジを通して少しずつ見えてきたことがあります。それは戦争です。古典の時代背景には戦争があります。常に死が身近にあるからこそ、それぞれの作品に独特の死生観が付いてまわっているような気がします。
現代社会では死を極力退けようとする趣きがあるので当然現代小説の特徴と古典のそれとは大きな違いがあるように思います。

『本を読む人だけが手にするもの(古典編)』自薦または他薦50冊のうち6冊目の書評


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