よのなかフォーラム
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タイトル 新春小説『初笑み』
投稿日: 2020/01/03(Fri) 09:03
投稿者USA

新春小説『初笑み』

「なんや真衣ちゃん、えらい元気ないやん。どうしたん?」
「別にどないもないよ」
妻の姉の一人娘、俺からみれば義姪にあたる真衣だが、いつになく元気がなくその表情には翳りがみえる。
「高校受験控えてナーバスになってんねん、この子。受験を意識しすぎて逆に勉強にも集中できてないんやわ」
と真衣の母が割って入った。

毎年正月には妻の親戚がなぜか我が家に集まる。なぜかはわからないがここ数年そうなっている。理由は諸説あるがおそらくは妻の実家が我が家より狭いことがメインの理由だろう。
真衣が物心つく頃には俺は妻と結婚していたので、真衣のことは小さい頃からよく知っているし真衣は俺に懐いていた。だからこそ真衣の表情の変化にも気づいたのだ。

「そんなに勉強しんどいんか?」
と俺が尋ねると、
「別にそんなことないけど」
と真衣。
昔の可愛い真衣ちゃんはどこにいったの、と心の中で呟いたが、どこかで自分も似たようなことがあったなと懐かしがる自分もいた。
「こんな時に縁起の悪い話して申し訳ないけど、少しおっちゃんの話してええか?」
「縁起の悪い話ってなんなん?」
「おっちゃんの大学受験の時の話や。おっちゃんな、高校生の時はクラブが忙しくて勉強なんかと両立できるほど器用やなかったからほとんど勉強してへんかってん。クラブを引退してから一生懸命勉強して大学受験してんけどな、その結果どうやったと思う?」
「どう、って。そんなに勉強したんやからどこか受かったんちゃうん?」
「そう思うやろ。それがやで、なんと全落ちや。全部やで。いろんな学部受けたから10通くらい不合格通知が来たんちゃうかな。
1通目の通知が届いた時はまだ他にもあるからとか余裕があったけどな、7通目くらいの不合格通知になるとさすがに血の気が引いてきたわ。8通目はもう勘弁してって感じになって、9通目にはもう殺してって感じになって、10通目にはもう笑うしかなかったわ。笑うしかなくてな、最後には
今回はこんくらいにしといたろっ!
って感じになってたわ。吉本新喜劇の池乃めだか師匠みたいな感じや」
「池乃めだかって誰なん?」
「池乃めだか知らんか?小ちゃいおっちゃんでな、いつもめだか師匠の前には大男が現れんねん。そんでな、めだか師匠は大男に立ち向かうんやけど、背が小さいし手も短いから大男に頭を押さえられると相手に手が届かへんねん。それでも相手に当たりもしないパンチをブンブン振り回すんや。それで最後にこういうねん。
今回はこんくらいにしといたろ、って」
「めだか師匠、めっちゃおもろいやん!」
「せやろ!おもろいねん。それになんかな、元気貰えるんやわ、それ見ると。
俺もな、全落ちでへこんだけど、もう開き直るしかなくてな。そんでその悔しさを今度は全部浪人生活でぶつけたろうって決めたんや。結果はどうであれ、後悔だけはせんとこうと思って。あの浪人中は人生で一番勉強したわ」
「それで結果はどうなったん?」
「今度はな、なんと全受かりや。ほんまにスッキリしたで。合格通知持ってきてくれた郵便局の人の前で、おっしゃー!!って叫んでもうたからな。それくらい嬉しかったわ。合格通知は厚みからして不合格通知とは雲泥の差やからな。すぐ合格ってわかったわ」
「それゃ嬉しいかったやろな」
「でもな、真衣。おっちゃんにはまだまだ失敗話があるんやで。
今度はな、就職してからの話や。希望の会社から内定貰ってな、そこでバリバリ頑張ろうと思っててん」
「希望の会社に入れたんやったら良かったやん。それやったら頑張れたやろ?」
「それがな、原因は今になってもわからんけど会社入った瞬間から体調壊してしまってん。何が原因かはほんまにわからん。でも原因がわからんからこそどうしようもなくて1年も持たずに会社辞めてん」
「ほんまに!?」
「ほんまや。それでもな、やっぱり食っていかなアカンから仕事せーへんわけにはいかんし、だからいろいろ考えたよ。いろいろ考えた結果、また一生懸命勉強して今の職場におるんやわ。今は満足して仕事できてるし幸せやで」
「なんかおっちゃんの人生、波乱万丈やな」
「言われてみたらそうかもしれんな。でもな、真衣。おっちゃんは何が言いたいかというと、人生なんてなんぼでも巻き返しのチャンスがあるってことや。だから別にいくら失敗してもいいし、またチャレンジしたらええだけの話や。
だから今真衣にできることは、とりあえず自分の今できるベストを尽くすことだけやで。結果がどうであれ、俺らには池乃めだか師匠がついてるわ」
「池乃めだか師匠言われても、私知らんし」
と言いながら、真衣の表情からは翳りが消えて新春初笑みが浮かんでいた。

(著者あとがき)
新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
本小説は半分以上は実話を基にしています。
少しでも元気になっていただければと思い作りました。
本年も皆さまにとって良い一年でありますように。


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