よのなかフォーラム
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タイトル 短編小説『ラジオ』
投稿日: 2019/06/02(Sun) 23:19
投稿者USA

「今週も始まりました、日曜朝7時より5時間に渡ってお送りするFM800『Osaka’n favorite 100』。
いつものこの番組では、大阪で今もっともホットで話題の100曲をご紹介しているのですが、なんと言っても今日はFM800が開局してから50周年の記念の日。
そこで本日の放送は『あなただけのFM800』というテーマに沿って、あなたとFM800の繋がりをご紹介いただけたらと思います。
内容はどんなものでも構いません。FM800で知った好きな曲のことでもいいですし、好きなDJのことでもなんでも構いません。それではこの番組が終了するまでの5時間、メールでもファックスでもドシドシご連絡をお待ちしております」

「さぁ、番組も終盤に差し掛かってまいりました。たくさんのメッセージありがとうございます。
それではここで一通のメールをご紹介させていただきたいと思います。ラジオネームはロンリーラビットさんです。

私は今この番組を東京の一人暮らしの部屋で聴いています。就職を機に上京して3年目です。いまだに東京の生活と仕事になかなか馴染めず、なんとか精一杯毎日を過ごしています。そんな私にとってとても大事にしている時間がこの『Osaka’n favorite 100』です。東京に来てからもアプリを使って毎週リアルタイムで聴かせていただいています。この時間だけが私が大阪にいた時と変わらず同じリズムで同じ気持ちでいられるとても貴重な時間なんです。
これからも楽しみにしています。

というお便りでした。

ちょっと待ってくださいね。すみません、、、ちょっと。ごめんなさいね。
あれ、涙が止まらないや。ごめんなさい、ごめんなさい。

すみません、急遽CMを挟ませていただきました。完全に放送事故ですよね。誠に申し訳ない。
ロンリーラビットさん、このラジオまだ聴いてくれているのかな。
予定にはなかったのですが、少し僕の話をさせていただきたいと思います。
DJは夢を語る仕事だし、あまり僕自身のことを語ってしまうと余計なイメージが皆さんの頭に残ってしまい、本来届けたいことがリスナーに伝わらないといけないのでDJはあまり自分のことを語らないものなんだけど、ロンリーラビットさんにちょっとした御礼をお伝えできればと思い、少しだけお時間をいただくことにしました。
僕はFM800でDJをしてもう25年になります。今僕の年齢は50歳だからちょうど自分の人生の半分をこうして皆さんの前でDJとして活動させてもらっています。
僕がね、ラジオに興味をもったのは小学生の頃です。
僕にはね、両親がいません。幼くして交通事故で両親を亡くしました。
それからというもの、叔母さんの家に引き取ってもらったの。叔母さんはね、本当に優しくてとても素敵な人。その叔母さんの支えなしでは今の僕は間違いなくいない。
でもね、やっぱり僕が小さかった頃には夜とかになるとね、ふとどうしようない不安と寂しさに襲われる時があってね。
そんな時、僕は布団の中でこっそりラジオを聴いてたんだ。当時は今みたいにスマホなんてなかったからね。
深夜ラジオを聴いてるとね、なぜかホッとしてね。気づいたらスヤスヤ眠っていたなんてことがあってね。
だからラジオはなんというか、僕にとってなくてはならない大事なものになってたんだ。
そのラジオはね、叔母さんの部屋にあったものだったんだけど、押入れの奥にそっとあったような感じだったから、おそらく使ってないものだろうと思ってこっそり借りていたんだ。
毎日聴いていたよ。本当に毎日。
僕はある時、ふと気がついたんだ。
あれ、このラジオ全然電池が切れないや。
僕はそのラジオの電池を一度も変えたことがなかったんだ。当時は特に気にも止めなかったんだけど、今思えばあのラジオの電池、おそらく叔母さんがこまめに変えてくれていたんだと思うんだよね。
僕が寝ながら聴いている時に途中で電池が切れたらきっと可愛そうだって。
僕がDJとして採用された時にね、誰より喜んでくれたのはその叔母さんだったの。
きっと僕がどんな思いでラジオを聴いていたのか叔母さんはわかってたんだと思う。
叔母さんの喜びながら流した涙を見て僕は叔母さんの優しさをどこまでも深く感じてね。
そんな叔母さんがね、先日亡くなったんだ。
病院の看護師さんがいうにはね、亡くなる寸前まで僕のラジオを楽しみにしてくれていたんだって。
ラジオはね、顔が見えないでしょ。それに誰が聴いてくれているかもさっぱりわからない。わからないんだけど、とても不思議なことにとても深い繋がりを感じられるんだ。
僕はね、叔母さんの死があまりにショックで、正直もうDJを辞めようと思っていた。
でもね、ロンリーラビットさん。あなたのおかげで僕はなんて幸せな仕事をしているんだろうと改めて気づかされました。
そのことで、自分の両親のこと、叔母さんのこと、幼き頃にベッドの中で1人聴いていたラジオのことが急に頭の中にフラッシュバックして、もうどうにも涙を止めることができなくなったんだ。
プロとして本当にお恥ずかしい。
でもロンリーラビットさん、本当にありがとう。
あなたのような方がいるから、FM800は50周年を迎えられたし、これからも前に進んでいけると思います。

そんなこんなで、5時間に渡ってお送りしたFM800『Osaka’n favorite 100』、終了のお時間となりました。
また気持ちを新たに、これからもあなたに素敵な彩りを週末に添えられよう番組をお送りしたいと思います。
これからもどうぞよろしく!!


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