よのなかフォーラム
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タイトル 恐ろしい才能
投稿日: 2018/12/18(Tue) 16:57
投稿者USA

この小説では父である将造が息子である研吾を「愛している」などといった直接的な表現は一切出てきません。
それだからこそ読者は父が子に対し想う気持ちを推測するしかありません。
将造は研吾を最後の最後に愛することができたのだと僕は思います。将造はおそらく剣道に取り憑かれていたのでしょう。相手と対峙するときにこそ血が滾り、生を実感し、至福の絶頂を感じていました。だからこそ家族のことなどは二の次で自分の欲求のためだけに剣道の道に逃げたのでしょう。しかし研吾との「死闘」では実の息子に対し致命傷を負わせることはできませんでした。その最後の一太刀の一瞬に、父は息子への愛を最初にして最後に実感できたのではないでしょうか。
その死闘後、研吾は自分を見失いアルコールに溺れます。そんな最中、ある青年に出会います。羽田融です。融には剣道の天賦の才がありました。何かに取り憑かれたように剣を振るう融に研吾は父の姿を重ね合わせます。
やがて研吾は実の父と交わしたように融と剣を交えます。それはもはや運命だったのでしょう。しかしこの試合に至るまでに研吾と融はお互いにそれぞれずっと自分と向き合ってきました。だからこそ2人の決闘は「死闘」にはなりませんでした。試合の最中、完全に2人だけの世界に入りました。両者はそこに宇宙を感じたのです。
このクライマックスの描写はもはや芸術の域です。とてつもない技量です。言葉だけでここまで感情と情景を描写する才能に僕は畏怖の念さえ感じました。


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