よのなかフォーラム
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タイトル 短編小説 『オモイドオリ』
投稿日: 2018/11/26(Mon) 23:55
投稿者USA

短編小説 『オモイドオリ』

「あかん、もう限界や。これ以上、脚が前に進まへん。」
20キロを過ぎたあたりから左の脹ら脛を痛め、それを庇うように走っているうちに腰を痛めた。一歩脚を踏み出すだけで激痛が襲う。
「まだ半分を少し過ぎただけや。こんな状態で完走はもう無理やな。もう脚も腰も思い通りにならへんわ。」
人生もマラソンも一緒やな。なかなか思い通りにはいかへん。そんな哲学的なことを心の中でボヤくほど精神的にも身体的にも限界にきていた。


「おい、兄ちゃん。そんなしんどい顔しとったら男前が台無しやぞ。元気出してや!」
(おっちゃん、無茶言うたらアカンで。男前かどうかは別にしてホンマ限界やねん。でもありがとう。少し元気でたわ。)

「飴ちゃん食べて〜な。元気でるで。ファイト!」
(ありがとう、ぼく。マラソン中に沿道からモノ貰っていいんかどうかようわからんけど、飴ちゃん、めっちゃ美味しいわ。少し元気でたわ。ありがとう。)

「みんな、楽しみましょう〜!」
ミニオンの被り物をした3人組が横を通り過ぎる。さすが大阪、ユニバがあるだけにミニオンを着てるんか。
(一体あの被り物何キロあんねん。あんな被り物してる人らに負けてる俺って一体・・・。でも笑わしてもろたわ。ありがとう。少し元気出たわ。)

「給水所でーす。バナナもありますよ。頑張ってくださーい。」
(ボランティアの皆さん、ありがとう。皆さんがいるからこうして走れてます。少し元気出たわ)

その横で今度はくいだおれ人形の被り物をした人が僕を追い抜く。
(もうええって。どこまで大阪やねん。でも迂闊にもまた笑ってもうたわ。少し元気出たわ。ありがとう)


「パパ、頑張って〜!!」
どこぞの天使かと思ったら息子だった。その横には聖母、もとい妻がいた。そして周りにはテニスの仲間達まで。
「ホンマにありがとう。もう限界はとうにきてるけど、おかげですごい元気出たわ。もう少しだけ頑張ってみるわ!」


沿道は応援してくれる人たちで途切れることがなかった。そして途切れることのない「頑張って」の一言一言に乗せられるようにして僕は少しずつ一歩一歩前に進んでいた。


僕は全くゴールできるとは思っていなかった。
でもそのオモイドオリにはならなかった。
思いがけない皆んなからの温かく優しい声援が僕を後押ししゴールラインを切らせてくれた。
マラソンも人生も、想像できないくらい、思いもよらない素晴らしいところに僕を連れていってくれる。

大阪マラソンは、自分を、家族を、友達を、大阪をもっともっと好きになれるとても素敵なお祭りだった。


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