よのなかフォーラム
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タイトル Re^3: 続編に感謝
投稿日: 2018/10/18(Thu) 20:46
投稿者USA

> 個人的な希望としては
>
> 8ばーちゃん、 9海岸 など
>
> もう少し書き込まれてもいいのかな・・
> ばーちゃんも、おっちゃんも
> 久しぶりで帰ってきた孫、甥に対して
> いろんな気持ちがあったのでは?と思ったりしてます。
>
> すみません、実は、私、元小学校教師で
> 子どもたちの作文に
> 「こうしたらどう?」って声掛けしていた時代があるの。

ご丁寧な講評、ありがとうございます。
さっそくテコ入れしてみました。
よのなかネット、本当にすごいですね。
松井の母さんの教えに基づいて今まさに修正主義を実践させていただいております(笑)
少しは良くなったでしょうか?


6 田舎
「おい、幸介。今度の夏休み、父さんと2人で一緒に田舎のばーちゃんちに帰らへんか?」
誘ってみたのには理由がある。結局、親と子なんて言うものは面と向かっては語り合えない。でも気持ちは通じている。それだけはわかって欲しい。俺とは面と向かって話せなくても、俺の兄貴や母親、親戚には話せることもあるだろう。
俺は高校を卒業と同時に徳島から大阪に出てきた。実家は徳島の山間にあり、海も近く川もある。本当に絵に描いたような昔ながらの自然豊かな田舎の原風景がそこにはある。ビルに囲まれた都会からこのような田舎の自然に触れるのはそれだけで幸介にとっていい刺激になると思う。

「幸介、ばーちゃん家に行くのはいつぶりや?」
「覚えてへん」
俺自身も心の中で思い起こしてみる。前に幸介を田舎に連れて行ったのはいつだろう?3年前か、4年前か、あるいはもっと。いづれにしても仕事が忙しく、何しろ土日が休みな訳ではないから家族で一緒に休日を過ごすということ自体が難しい。

道中、特に会話らしい会話があった訳ではない。
88のラジオを通してライブラリーが幸介のことだと気づいた時はびっくりしたどころの騒ぎではなかった。ランニング中であったがあまりの驚きに正面からの車に気づかず危うく轢かれかけた。
ラジオのことを聞いてみたい気もする。でも俺はそこには触れない。なんだか幸介の大事な「場」のような気がするからだ。いくら親でも無下に踏み込んでいけない「場」がきっとある。
幸介は車の窓から太陽の光に照り返された明石海峡の海を眺めていた。どんな表情で見ているのだろう。

7 おっちゃん
「おー、幸介。久しぶりやのー。元気しよったか?それにしても大きなったなー。」
和宏おじちゃんは父さんより4つ歳上だ。父さんは和宏おじちゃんとの2人兄弟。僕は和宏おじちゃんのことを昔から「おっちゃん」と呼んでいる。僕のおじいちゃん、父さんからすると実の父、は僕が2歳の頃に亡くなった。そのおじいちゃんのことを僕はおじいちゃんと言えずに「おっちゃん」と呼んでいたらしい。だからおじいちゃんが亡くなったあと、無意識に和宏おじちゃんのことを「おっちゃん」と言うようになったそうだ。
この「おっちゃん」、とにかく底抜けに性格が明るい。多分日本中の誰とでも仲良くなれるだろう。そう思わずにはいられないくらい誰とでも分け隔てなく話すことができる。
久しぶりの対面の挨拶もそこそこに、おっちゃんが
「幸介、お寺さん行くか?」
と誘い出してくれた。
着いたお寺は四国八十八箇所巡りのうちの一箇所で、正月には徳島中から人が集まるくらいの由緒ある寺である。
夏の暑さは堪えるが、なんとか寺の本堂まで辿り着いた。頂上まで着いてみると気持ちの良い風が山から吹き下ろしていた。
「どや、気持ちええやろ。ここからやったら町が一望できるけんの〜」
おっちゃんはそう言いながら、久しぶりの再会をなんだかとても喜んでいるようだった。
僕は帰りの階段を一歩降りるごとに心が軽くなっているように感じた。前を歩くおっちゃんと父さんの後姿はとてもそっくりで僕は思わず笑ってしまった。

8 ばーちゃん
僕の帰省に一際喜んでくれていたのがばーちゃんだ。少し脚が弱っているからなかなか満足には歩けないけれど、何歳になってもなお阿波茶の茶摘みにいく元気いっぱいのばーちゃん。
ばーちゃんはお酒が大好きだ。無尽蔵に焼酎を飲む。酒を飲みながら「これ食べよ。あれも美味しいけんの〜。食べよ〜」と自分の飲むお酒の量と比例するかのように無尽蔵にご飯を僕に勧めてくる。
おっちゃん曰く、今日のお酒のペースはいつもにも増して速いらしい。
「もうホンマにこれ以上無理やわ。マジで食べれられへんって」と照れ隠し紛れにばーちゃんに悪態をつく。この時間もなんだか懐かしい。
「幸介はこんまい頃はホンマに可愛らしい顔しよって、よー女の子に間違えられよったけんの〜。それがこんなに大きなって」
とばーちゃんに言われ、僕は嬉しいような恥ずかしいような甘酸っぱい気持ちになった。
僕は大きくなったけど、前に来たときよりもばーちゃんは小さくなったような気がする。僕の心は少しズキンとした。
程よく酔いが回ったばーちゃんは、おじいちゃんが満州から引き上げてきた時の話や、実の妹と一緒に旅行したソ連解体後すぐのロシアの話など歴史の教科書に出てくるような話を僕にしていた。正直お酒が入っている状態のばーちゃんの話はほとんど理解ができなかったが、とにかくばーちゃんはよく喋り、よく笑いそして何より嬉しそうだった。

父さんと僕の久しぶりの帰省に、親戚がたくさんばーちゃん家に集まっていた。
「幸介の父さんは昔はそりゃ男前やったぞ。」
「お前が通ってた学校、もう取り壊されて今はのうなったわ。」
そんな取り留めのない話をみんな楽しそうに話していた。
その横で心地よい疲れが僕を眠りに誘った。みんなの夜はいつまで続いていたのかな。

9 ウミガメ海岸
翌日父さんは同窓会があるとのことなので、おっちゃんが通称「ウミガメ海岸」まで連れて行ってくれた。ばーちゃん家から車で20分くらいのところにある海岸で全国的にも有名なウミガメの産卵地だ。海岸の近くにはウミガメだけの水族館があるほどだ。
海岸沿いを歩きながら、おっちゃんが
「あそこに大きな岩があるやろ。幸介の父さんが小さい頃はあの岩までよう泳ぎに行きよったけんの〜」
とポツリ独り言のように僕に語りかけた。

おっちゃんはよく父さんに電話をしてくる。
そこではどんな会話をしてるんかな?
僕のことも話題には出てるんかな?
そんな時、父さんはおっちゃんに僕のことをどんな風に話しているのだろう。
もしかしたらおっちゃんは少しでも僕と父さんの距離を縮めたくてウミガメ海岸に連れてきてくれたんかな。
考え過ぎなんかな?心の中で微笑む。
目の前には水平線に夕陽が沈みかけていた。あまりの幻想的な情景に僕は息を飲んだ。
父さんも僕くらいの年齢の時にはこんな風にこの景色を見ていたのかな。
そう考えると少しだけ父さんとの距離が近くなったように感じた。

10 イルミネーション
「おう、幸介、また来いよ〜」
兄貴の言葉に「うん」と幸介は返事をしていた。その言葉は心なしか弾んでるように聞こえた。一方母さんは寂しそうに「また来んね」と言い、別れを惜しんでいた。
兄貴や親戚が育てたお米や野菜などいろんなお土産を車に携え、幸介とともに帰路についた。
帰りの車内でも特にこれといった会話はなかった。
しかし明石海峡大橋が見えたあたりで助手席から聞こえるか聞こえないかの小さな声で
「来年もまた来たいな」
と幸介がつぶやいた。
明石海峡大橋はイルミネーションが代わる代わる七色の虹色に輝いていた。
サイドミラー越しに見えた幸介の表情ははにかんだような笑顔だった。


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