よのなかフォーラム
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タイトル Re^2: シンクロしましたね^_^
投稿日: 2018/10/17(Wed) 12:59
投稿者USA

> 引き続きよろしくお願いいたします。

父と子の関係についての続編のリクエストがございましたので作ってみました。引き続きお楽しみいただけたらと思います。


6 田舎
「おい、幸介。今度の夏休み、父さんと2人で一緒に田舎のばーちゃんちに帰らへんか?」
誘ってみたのには理由がある。結局、親と子なんて言うものは面と向かっては語り合えない。でも気持ちは通じている。それだけはわかって欲しい。俺とは面と向かって話せなくても、俺の兄貴や母親、親戚には話せることもあるだろう。
俺は高校を卒業と同時に徳島から大阪に出てきた。実家は徳島の山間にあり、海も近く川もある。本当に絵に描いたような昔ながらの自然豊かな田舎の原風景がそこにはある。ビルに囲まれた都会からこのような田舎の自然に触れるのはそれだけで幸介にとっていい刺激になると思う。

「幸介、ばーちゃん家に行くのはいつぶりや?」
「覚えてへん」
俺自身も心の中で思い起こしてみる。前に幸介を田舎に連れて行ったのはいつだろう?3年前か、4年前か、あるいはもっと。いづれにしても仕事が忙しく、何しろ土日が休みな訳ではないから家族で一緒に休日を過ごすということ自体が難しい。

道中、特に会話らしい会話があった訳ではない。
88のラジオを通してライブラリーが幸介のことだと気づいた時はびっくりしたどころの騒ぎではなかった。ランニング中であったがあまりの驚きに正面からの車に気づかず危うく轢かれかけた。
ラジオのことを聞いてみたい気もする。でも俺はそこには触れない。なんだか幸介の大事な「場」のような気がするからだ。いくら親でも無下に踏み込んでいけない「場」がきっとある。
幸介は車の窓から太陽の光に照り返された明石海峡の海を眺めていた。どんな表情で見ているのだろう。

7 おっちゃん
「おー、幸介。久しぶりやのー。元気しよったか?」
和宏おじちゃんは父さんより4つ歳上だ。父さんは和宏おじちゃんとの2人兄弟。僕は和宏おじちゃんのことを昔から「おっちゃん」と呼んでいる。僕のおじいちゃん、父さんからすると実の父、は僕が2歳の頃に亡くなった。そのおじいちゃんのことを僕はおじいちゃんと言えずに「おっちゃん」と呼んでいたらしい。だからおじいちゃんが亡くなったあと、無意識に和宏おじちゃんのことを「おっちゃん」と言うようになったそうだ。
この「おっちゃん」、とにかく底抜けに性格が明るい。多分日本中の誰とでも仲良くなれるだろう。そう思わずにはいられないくらい誰とでも分け隔てなく話すことができる。
「幸介、お寺さん行くか?」とおっちゃん。
この寺は四国八十八箇所巡りのうちの一箇所で、正月には徳島中から人が集まるくらいの由緒ある寺である。
夏の暑さは堪えるが、なんとかして寺の本堂まで辿り着いた。
「どや、気持ちええやろ。ここからやったら町が一望できるけんの〜」
僕は少しずつ心が軽くなっているように感じた。

8 ばーちゃん
ばーちゃん、僕の父さんのお母さん、もまた明るい。何歳になっても、なお阿波茶の茶摘みにいくパワフルさ。そして何よりお酒が強い。無尽蔵に焼酎を飲む。酒を飲みながら「これ食べよ。あれも美味しいけんの〜。食べよ〜」と僕に無尽蔵にご飯を勧めてくる。田舎の人によくありがちな光景。
「もうホンマにこれ以上無理やわ。マジで食べれられへんって」と照れ隠し紛れにばーちゃんに悪態をつく。この時間もなんだか懐かしい。嬉しい。

9 海岸
ばーちゃん家から車で20分くらいのところにとある海岸がある。この海岸は全国的にも有名なウミガメの産卵地で近くにはウミガメだけの水族館があるほどだ。
海岸沿いを歩きながら、おっちゃんが「あそこに大きな岩があるやろ。幸介の父さんが小さい頃はあの岩までよう泳ぎに行きよったけんの〜」と僕に語りかけた。
夕焼けに染まる海の水面を見つめながら、父さんも僕くらいの年齢の時には毎日のようにこの綺麗な景色を見ていたのかなと思うと、少しだけ父さんとの距離が近くなったように感じた。

10 イルミネーション
「おう、幸介、また来いよ〜」
兄貴の言葉に「うん」と幸介は返事をしていた。その言葉は心なしか弾んでるように聞こえた。
兄貴や親戚が育てたお米や野菜などいろんなお土産を車に携え、幸介とともに帰路についた。
帰りの車内でも特にこれといった会話なかった。
しかし明石海峡大橋が見えたあたりで助手席から聞こえるか聞こえないかの小さな声で
「来年もまた来たいな」
と幸介がつぶやいた。
色鮮やかな虹色に変色する明石海峡大橋のイルミネーションを、今幸介はどんな表情で見ているのだろう。


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