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タイトル短編小説『繋がり』
記事No5361
投稿日: 2020/08/21(Fri) 21:00
投稿者USA
「な、何言ってるの?」
夫のジョセフの言葉に私は戸惑い、ただ狼狽ることしかできなかった。
「何って今言ったとおりさ。僕はこの家を出ていくよ」
「出て行くってなんでよ。私たちとても幸せだったじゃない。なにが不満なの?」
「僕も同じさ。とても幸せだったよ。これ以上ないくらいにね。素敵な子供たちにも恵まれ、立派に育ってくれて。それに君も本当に家族に良く尽くしてくれた。ただただ感謝しかないよ。不満なんてある訳がない」
「それなら、、、なぜ、、、なぜなのよ」
「僕はね、君たちにすべてをもらったんだ。家族とはなんなのか。幸せとはなんなのか。そしてそれがどれほど掛け替えのないものなのか。でもね、リサ。世界にはそんな幸せが存在すらことすら知らない人がごまんといるのさ。そんなのおかしいと思わないかい?
僕らのようにすべてを手にしたものもいる。その一方でなにも手にしていないものもいる。だから僕は世界を平たくしたいのさ。平たくして誰もが当たり前に幸せにアクセスできるようにしたいんだ」
「だからってあなたになにができるというのよ」
「なにもできないさ。でも僕はまず自分の真逆にある世界を覗かなくてはいけない。その世界を知らないことには世界をフラットになんかできやしないのさ」
「そんな馬鹿なこと言わないでよ。そしたら私はどうなるの?最愛のあなたを失ってどう生きていけばいいのよ」
「まだわからないのかい?どうして君は僕がいなくなることで不幸になると言い切れるんだい?僕がいない世界の方がより幸せかもしれないよ。真逆を生きるということはそれだけ世界が広がるということさ。
頼むよ、リサ。もし僕を愛しているならば、最後のお願いだ。僕を自由にしてくれないか」
「ばかを言うのも休み休みにしてよ。それじゃ今までの生活はなんだっていうのよ。不幸になるために幸せを築きあげてきたとでもいうの。
ここで今あなたと別れて、残された私たちが今より不幸になったらどうするのよ。身近にいる人を不幸にさせておいて、他人なんか幸せにできるはずないじゃない」
「でももう決めたことなんだ。もうあとにはひけないよ。それにね、君たちがこれから生きていく上で困らないくらいの貯えはあるよ。だからなにも心配することなんてないさ。
何も別れようなんて言ってないよ。ただ時間が欲しいだけなんだ。でもその時間がどれくらい必要なのかもわからない。だからこそ君にも自由になってほしい。そう願うのさ」


ジョセフ 10年後
ジョセフは最貧国スーダンにいた。
しかし彼にできることは何もなかった。今まで上手くいっていたのは会社という組織の後ろ盾と家族の支えがあったからだった。
それらを失った彼には何もできることなどなかった。
一方、彼の目の前には子供たちの笑顔があった。どうやら海外から送られてきた洋服に大喜びのようだ。その服にはどこか懐かしさを覚えた。


リサ 10年後
子供を育てきた経験を活かしたいとリサはかねてから考えていた。リサは自分が裁縫し装飾した服を子供に着せることが大好きだった。そしてその服を子供たちも喜んで着てくれていた。
リサは自分が子供たちに作った服を大事に保管していた。もう不要になったからと、リサはそれらを貧しい国々の子供たちに寄付した。
するとどうだろう。その服が評判となり多くの企業がスポンサーとなり、彼女の服を模倣したものが世界中の子供の手に渡るようになった。そんな子供たちの笑顔を見て、リサは今まで経験したことのないような幸福を感じたのであった。

タイトルRe: 短編小説『繋がり』
記事No5378
投稿日: 2020/09/04(Fri) 22:59
投稿者ようへい
USA様

いつもありがとうございます。

ジョセフとリサ 
どちらが正解かはわかりません。
いや、性格に言うとどちらも正解に思えます。

そのままだったら絶対に見えなかった景色を見らる経験は、かけがえが無いので。

そういえば、作家USA様は未来で過去をクロスリンクさせることによって、繋がりを表現されてきましたよね。

奈良市在住 ようへい