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タイトルあすなろ物語
記事No5093
投稿日: 2020/01/05(Sun) 01:11
投稿者USA
『あすなろ物語』(新潮文庫)井上靖

明日は檜(ひのき)になろうなろうと思っていて、ついに檜になり得ない翌檜(あすなろ)

このフレーズが小説の骨格となっております。
主人公の鮎太の幼少期から青年期までを描いた物語なのですが、その成長の過程で鮎太は様々な人と出会います。

幼少期には翌檜の木の下で無理心中を図った2人の男女に出会います。その男性は大学生で鮎太は勉学面において多大な影響を受けていました。もう一方の女性は遠い親戚にあたり鮎太はその女性に少し惹かれるものがありました。そんな因縁浅からぬ2人が何者になることもなく翌檜の木の下で死を遂げるのです。

また鮎太は高校生の時に3人の親友に出会います。鮎太を含めた4人組はある女性達に恋をするのですが、大学生になった鮎太達はその女性達に振り向いてもらうためにもいつか檜になりたいともがきます。
一人は左翼活動家として逮捕され新聞一面に掲載。
一人は戦争の召集令状を受け戦死。
一人は海外留学。
残る鮎太は未だ檜になろうとすらしていない、つまりは翌檜にすらなっていない状態です。
そんな鮎太にも召集令状が届きます。戦地に赴く鮎太は周りがバタバタと死にゆく中で生き延びます。

帰還後、鮎太は新聞記者となります。そこでも出会いがあります。しかし時は戦中。だんだんと「翌檜」どころではなくなり明日生きることだけでも精一杯になっていきます。

古典チャレンジを通して少しずつ見えてきたことがあります。それは戦争です。古典の時代背景には戦争があります。常に死が身近にあるからこそ、それぞれの作品に独特の死生観が付いてまわっているような気がします。
現代社会では死を極力退けようとする趣きがあるので当然現代小説の特徴と古典のそれとは大きな違いがあるように思います。

『本を読む人だけが手にするもの(古典編)』自薦または他薦50冊のうち6冊目の書評

タイトルRe: あすなろ物語
記事No5096
投稿日: 2020/01/06(Mon) 09:25
投稿者ようへい
USA様

いつもありがとうございます

古典チャレンジを通して少しずつ見えてきたことがあります。それは戦争です。古典の時代背景には戦争があります。常に死が身近にあるからこそ、それぞれの作品に独特の死生観が付いてまわっているような気がします。
現代社会では死を極力退けようとする趣きがあるので当然現代小説の特徴と古典のそれとは大きな違いがあるように思います。


まったくの同意です。
多くの人が命よりも正義(その国、その集団にとっての正義)のために亡くなる矛盾に対する想いは、平和が継続している現代から見ると体感できなくなくなっている観点だと思います。

今は、自分とは何か?のような自己承認に対する想いがメインストリームのように思います。

奈良市在住 ようへい

タイトル読みました。
記事No5100
投稿日: 2020/01/12(Sun) 09:01
投稿者カズ
> 『あすなろ物語』(新潮文庫)井上靖

 明日は何者かになろうと夢見ながら、まだ何者にもなれないでいるもどかしさ。
 私が生まれる前、1954年に描かれた物語にもかかわらず、十分に現代的なテーマですよね。

 戦争の廃虚で「明日なろう」が一旦完膚なきまでに破壊尽くされたのちに立ち上がってくる、雑草のような人々の「明日なろう」にもこころが動きましたが、物語の中に登場する6人の女性と主人公との関係が、折り重なるように6者6様に描かれていて、この小説の奥行きを増しているような気がしました。
 

タイトルRe: 読みました。
記事No5101
投稿日: 2020/01/13(Mon) 00:16
投稿者USA
> > 『あすなろ物語』(新潮文庫)井上靖
>

>  私が生まれる前、1954年に描かれた物語にもかかわらず、十分に現代的なテーマですよね。

そうなんですよね。古典が現代でも読み継がれる理由はまさにここに尽きると思います。
だからこそこの古典チャレンジはぜひ皆さまにもチャレンジしていただく価値があると僕は思います。
特に人生経験を重ねた30代以上の方にオススメです。10代20代では古典の小説に描かれていることはいくら文学的に価値があっても読んでもあまりピンとこないのではないでしょうか。


>  戦争の廃虚で「明日なろう」が一旦完膚なきまでに破壊尽くされたのちに立ち上がってくる、雑草のような人々の「明日なろう」にもこころが動きましたが、物語の中に登場する6人の女性と主人公との関係が、折り重なるように6者6様に描かれていて、この小説の奥行きを増しているような気がしました。

やはり戦争はこの頃の小説には切っても切り離せないと思います。自分の意志ではどうしようもない戦争という現実があり、また表現できる内容にも大いに制約がある状況下だったからこそ、そもそも人間とはなんなのかと深く深く追求していったのではないのかなと僕は勝手ながらに想像したりもしました。
そのあたりを語り合いたくて、夏目漱石と僕が夢の中で語り合うという妄想小説を作ってしまいました。

タイトル妄想のすすめ
記事No5102
投稿日: 2020/01/13(Mon) 08:36
投稿者カズ
> そのあたりを語り合いたくて、夏目漱石と僕が夢の中で語り合うという妄想小説を作ってしまいました。

 これ、ドンドンやったほうがいいです。
 妄想というのはイマジネーションの訓練ですから、脳の中でドンドン(別々の場所に記憶されている要素が)つながり始めます。

 「つなげる力」=情報編集力ですからね。

 先週土曜日に近畿大学でやった就活キックオフイベントの基調講演でも、1000人以上の学生や先生たちを前に「電車に乗ると即スマホ出してネットゲームしてるようじゃもうダメ。就活中からそれやめて、いろいろ頭の中で妄想したほうがいい。あと、朝からパチンコ屋さんに並ぶようなパチンコ中毒でも、スマホのゲーム中毒でもない人は、その余裕ある時間で月に1冊でも本を読む習慣をつけるだけですでに8人に1人、それ以上読書してる人はすでに10人に1人の希少性があるのだから、みんな在学中に10人に1人になって、20代でまず100人に1人のレアカードを目指そう!」と話しておきました。

タイトルRe: 妄想のすすめ
記事No5104
投稿日: 2020/01/17(Fri) 22:27
投稿者ようへい
朝からパチンコ屋さんに並ぶようなパチンコ中毒でも、スマホのゲーム中毒でもない人は、その余裕ある時間で月に1冊でも本を読む習慣をつけるだけですでに8人に1人、それ以上読書してる人はすでに10人に1人の希少性があるのだから、みんな在学中に10人に1人になって、20代でまず100人に1人のレアカードを目指そう!

この低そうなハードルでさえ1/10希少性なんですね・・・

そういえば近所の客単価2000円は超えていそうな、いつも行列が絶えないトンカツ店の店長が
「やれることをやっているだけなんです。」と言っていたことと通じる物があると感じました。

奈良市在住 ようへい

タイトルRe^2: 妄想のすすめ
記事No5110
投稿日: 2020/01/18(Sat) 19:59
投稿者USA
> 朝からパチンコ屋さんに並ぶようなパチンコ中毒でも、スマホのゲーム中毒でもない人は、その余裕ある時間で月に1冊でも本を読む習慣をつけるだけですでに8人に1人、それ以上読書してる人はすでに10人に1人の希少性があるのだから、みんな在学中に10人に1人になって、20代でまず100人に1人のレアカードを目指そう!
>
> この低そうなハードルでさえ1/10希少性なんですね・・・

僕は毎朝電車に揺られながら通勤していますが、電車の中で本を読んでいる人はほんとに数えるほどしかいません。だから本を読むだけで希少性が高まるっていうのはそのとおりだと思います。
『本を読む人だけが手にするもの』が全国の学校に一冊でもいいから置かれたら、日本全体にどんな変化が起こるのかなぁとか思ったりします。