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タイトル小説『地球の裏表で』
記事No5081
投稿日: 2019/12/28(Sat) 09:53
投稿者USA
小説『地球の裏表で』

表側(日本 東京)
「本日は御日柄もよく、絶好のお見合い日和となりましたね」
社長令嬢である飯尾麻里は祖父が元政治家で本人が一流商社に勤務する沢田隆と知人を介してお見合いに臨んでいた。

裏側(エジプト カイロ)
「今日はあまり生徒がいなかった。これじゃ稼げないよ。子供のためにもなんとかしなくちゃいけないのに」
地元の英会話教室で講師を勤めるサーシャだが、政治情勢が不安定なこともあってか教育に感心がある世帯が目に見えて減っていることを嘆いていた。

表側(日本 東京)
「せっかくいただいたご縁だし、隆さんもとても良い方だったから今回のお話は大事にしたいわ」
麻里はこの度の縁談に前向きになっており、先方にもその意向を伝えていた。

裏側(エジプト カイロ)
「なにか安定して収入が入る方法はないかしら。いくら英語を教えたいと思ってもその需要がないなら技術の持ち腐れだわ」
サーシャはかつてジャーナリストとして世界を飛び回っていた。しかし結婚し二児の母となった今ではそうもいかなくなったのだ。

表側(日本 東京)
「隆さんはどこの国に赴任するかわからないし、もし結婚したら私も着いていくことになるだろうし、英語くらいは身につけておこうかな。そういえば最近オンライン英会話が流行ってるみたいね。どんなもんかな」

裏側(エジプト カイロ)
「英会話にお金を払うとすれば比較的裕福な人よね。それを考えるとエジプト人を相手にしても上手くいかないよね、きっと。裕福な国って言えば日本?そういえばある会社がオンラインで英語講師を募集してたような」

ノーボーダー(オンライン)
「こんにちは。麻里です。あまり英語は得意ではないですがよろしくお願いします」
「私はサーシャよ。エジプトのカイロに住んでいるわ。麻里さんはどうして英語を勉強してるの?」
「どうしてって、、、。お見合いで知り合った方がいてその方が商社でお勤めされてるから私も英語を身につけた方がいいと思って」
「そうなんだ。あなたは今どんな仕事をしてるの?」
「父の会社で事務をしています」
「そうなんだ。でも事務ってどんなこと?」
「大したことはしていません。それに毎日会社にいるわけじゃないし、、、」
「ところでお見合いって何?」
「お見合いっていうのは、、、。私の英語力では説明は難しいですけど、、、つまり結婚する人をお知り合いが紹介してくれること、です」
「結婚相手を紹介?つまり初対面の人にもかかわらず結婚するかもしれないってこと?それってクレイジーよ。私の感覚からじゃありえないわ」
「そうかしら、、、」
「そうかしらってあなた。麻里さん。あなたとは今日はじめてお話するけど、失礼ながらあなたはもっと自分を大事にした方がいいわ」

表側(日本 東京)
「私の今までの人生はこれでよかったかしら。両親に勧められた小学校から大学までの一貫校に通い、挙句に結婚相手まで勧められた相手を選ぼうとしている」
麻里は地球の裏側にいるサーシャとの偶然の出会いによって生まれて初めて自分の人生を振り返った。そして戸惑っていた。与えられることが当たり前の人生で自分でどうこう選択などしたことがなかったからだ。

裏側(エジプト カイロ)
「はるか彼方にいる日本の女性にあんなこと口走ってよかったのかしら」
サーシャは戸惑っていた。しかし言わずにはいられなかった。
かつてジャーナリストとして世界を見てきたからこそ思うことがある。世界の最貧困の地域では女性を女性として扱われていない世界が確実に存在する。
でもそんな彼女たちと麻里に本質的な違いがどこにあるのだろうか。自立した考えを持ってこそ人生と言えるのではないか。
英語では生計を立てることは「make a living 」という。つまりは人生を設計するということだ。麻里は自分で設計しているか。ただ単に与えられたものに疑問を抱くこともなく日々を過ごしているように思えてならない。
それが私には哀しい。

表側(日本 東京)
「私にはとても忘れがたい出会いがありました。それは40年前のことです。私はオンラインでエジプトにいるある女性と出会いました。彼女との会話の中で私は初めて、自立、という言葉を意識しました。それを意識すること自体が自立への大きな大きな一歩でした」
麻里は冒頭の演説でこう述べた。
場所は国会議事堂。日本初の女性内閣総理大臣としての所信表明演説だった。


(著者あとがき)
この小説は『細雪』と『Because I am a Girl 』にインスピレーションをいただいて出来た作品です。
『細雪』は昭和期の上流階級の生活を描いた四姉妹の物語ですが、読みながらなんだか上流社会とは息苦しい世界なのだなと思いました。格式や形式に囚われるがあまり周りの目ばかりが気になり、そこに自立した人生はあるのだろうかと。正直僕はこんな人生御免だなと思いながら読み進めていました。

一方『Because I am a Girl』に登場する女性は『細雪』とは異なる現実の中にいます。そこに人権などは存在していないも同然です。
しかしその中でも両作品の中で登場する女性たちにも共通することもあるように思えたのです。
世界中で女性初の総理大臣や大統領が現れるようになれば世界はもっと良くなっているでしょうか。そう願って止みません。

タイトルRe: 小説『地球の裏表で』
記事No5084
投稿日: 2019/12/30(Mon) 23:45
投稿者ようへい
USA様 書評ありがとうございます。

うまいオチにグッときました。(^_^)

私は、人生の選択肢を切り開く事と同様に今目の前にあることをいかに対処していくかも大切だと考えています。

結婚して家庭に入る女性と自立して総理大臣となる独身女性がいたとしてどちらが正しいとも上とも思いません。

結局は、目の前の事にいかに対処して、どのように満足できるか。
この一点につきると考えるようになりました。

奈良市在住 ようへい

タイトル女性初
記事No5085
投稿日: 2019/12/30(Mon) 23:48
投稿者ようへい
そういえば、隣国の女性初の大統領が弾劾され投獄されたことを思い出しましたが、現在徐々に女性の大統領や首相が登場しつつあることは非常に良いことに思います。

奈良市在住 ようへい