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タイトル平場の月
記事No4913
投稿日: 2019/09/08(Sun) 18:26
投稿者USA
『平場の月』(光文社)朝倉かすみ

上手い。上手いというのは文章表現もそうだしストーリーもそうなのです。
表題の「平場」とは「どこにでもある」とか「庶民的な」といったニュアンスがこの小説には含まれています。

50歳のある男女が病院で出会います。その男性は検査入院しており、一方女性の方はその病院内のコンビニでアルバイトをしております。
実はこの男女2人は元々中学校が一緒の同級生。何十年ぶりの再会を機に、今までの人生を振り返るかのようにお互いのことを語り合います。
その語り合いがなんともいい感じで、そして実に上手いのです。なんでもないストーリーのように見えて、その表現の上手さゆえにグイグイストーリーに引き込まれていきます。

『本を読む人だけが手にするもの(小説編)』(よのなかフォーラム出版)皆さまからの推薦本50冊のうち48冊目の書評

タイトルあと二つ
記事No4916
投稿日: 2019/09/13(Fri) 23:01
投稿者ようへい
USA様
いつもありがとうございます。
平場という表現は、今まで生きてきて初めて聞く表現です。
簡単な言葉の組み合わせなのになじみがありませんでした。

私個人の病院のイメージは職場として行く病院と患者として行く病院景でこうも景色が異なるのものか。といつも感じます。毎回感じます。

ラスト2つですね。(^_^)

奈良市在住 ようへい

タイトルRe: あと二つ
記事No4928
投稿日: 2019/09/14(Sat) 18:26
投稿者USA
> 平場という表現は、今まで生きてきて初めて聞く表現です。
> 簡単な言葉の組み合わせなのになじみがありませんでした。

この小説は読みながら「幸せ」について考えさせられます。
この小説に登場する50歳の女性である須藤は、中学生の時に両親が離婚したことがきっかけで誰にも頼らなくても生きていけるよう強くなると決意します。
だから自分が大病を患ってもそれを受け入れる強さがあります。
しかし人には語ることができない経験を通して「自分は幸せになるには値しない」とどこか屈折した心持ちがあります。
強くあらねば、そして幸せになってはいけない。この2つの感情があるから、本当は好きなのにその好きな人に気持ちを素直に表現できないのです。
ではその好きな人とは誰なのか?それがふとしたことで再会した中学校の同級生、青砥です。青砥も須藤が中学生の頃好きでした。言い知れぬ強さを感じたからです。青砥は須藤とは違い自分の気持ちをありったけ伝えます。長い期間を経ての再会でも青砥はやはり須藤に惹かれます。大病を患っていようが須藤への気持ちは募るばかり。やっと2人の気持ちが通じ合いそうになった時に迎えた衝撃の結末に、僕の心は大きく揺さぶられました。

僕はすでにとても幸せです。大好きな家族に囲まれ、仕事にも恵まれ、これ以上幸せを望むとバチが当たるとさえ思います。だからこそこの幸せを守るために守りに入ってはいけないのではないかと思ってしまいます。この気持ちのバランスにどう折り合いをつけるかが僕にとってはとても難しいのです。変わりたくないから変わらなくてはいけない。
小説は本当に奥が深い。