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藤原編集長イチ押し図書ガイド



藤原和博作「ポンペイの少年」
人生で思い悩むとき、たった1冊の良書が
道を明るく照らしてくれることがあるもの。
読書経験豊富な藤原編集長が、
過去の膨大なるデータから、
「これは!とおすすめできる本」を
目的別にご案内します。
本選びに迷ったときは、ぜひご参考に…。
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[家を建てる前に読む本]〜家づくりを考える10冊

[転職しようと思ったときに読む本]〜仕事の本質を考える10冊

[子供が小学校に入ったら読む本]〜日本の教育を考える10冊

[親が寝たきりになる前に読む本]〜老人介護と医療福祉を考える5冊

[家を建てる前に読む本]〜家づくりを考える10冊
 10月から家を建てることを決意した私が、50冊以上の本を読んだ中から、どんなに忙しい人でもこの10冊は読んでからスタートした方がいいのではと思う本を紹介します。基本的なところで間違わないためには、ダマされないためには、いらないコストをセーブするためには、これらの本を読んで“自分自身の基本スタンス”を固めておくことが必要です。いわゆるノウハウ本の類は含みません。切り口は違えども、すべて「人間と家の新しい関係」を考える哲学にまで及んでいるものばかりです。
 私は9月21日発売の「月刊ハウジング」から毎月、私自身の家づくりを通じて「アレッ?」と思ったことや自分の思い込みにダマされてしまいがちなこと、失敗談などのエピソードを織りまぜながら、ホンネのレポートをしていきます。

 「家を建てるということ」を深く考えていくと、自分がどんなライフスタイルをしていて、それをどんな風に変えたいと思っているかが明らかになります。一緒に暮らしている家族の生活のリズムやクセの数々も並べてみなければ自分の家族にあった設計はできないでしょう。毎日顔を会わせていて性格を熟知しているはずの妻や夫が、家をつくるという現実を前に一体どんな人なのかが改めてあからさまになり、夫婦の溝がかえって深まったりもするのかもしれません。家づくりはまさに、個人の人生と生活態度を徹底的に試される、最もタフな“臨床哲学”の機会だといえます。

 まず、業界で最近話題になった2冊をサラッと飛ばし読みしてみることを薦めます。シックハウスの問題や、ニッポンの家族と住宅問題について、この2冊でざっと鳥瞰してみることができるでしょう。

1『世界で一番住みたい家』 赤池学・金谷年展著:TBSブリタニカ
北海道の異色ハウスメーカー「木の城たいせつ」(山口昭社長)の家づくりに対する哲学と方法をユニバーサルデザイン研究所の科学的な実験結果と織りまぜてドキュメントしたもの。ホルムアルデヒドやVOCなど家の中に発生する公害問題とその対策を先駆的に扱っている。私はこれを読んですぐに山口社長に会いに行ったのだが、ハーバード大などの英知を集めて地域にあった家づくりを追求する姿勢には、地場密着型の新しいタイプのベンチャー企業の芽を感じた。
2『「家をつくる」ということ』 藤原智美著:プレジデント社
芥川賞作家の藤原智美氏がミサワホームに取材しながら「家をつくる」ということの本質に迫っていくレポート。多くの施主は住宅展示場でモデルハウスを見るときリビングルームの吹き抜けや豪華なインテリアに酔いしれ“アットホームな「家族団らん」”をイメージする。が、調査してみると日本の家族はリビングでの滞留時間が意外と短く「家族団らん」の機会も一貫して少なくなっ ていることが明らかにされる。私にリビングルームはいらないと決意させた本。

 次に、家を建てようとする人が基本設計に入る前に読んでおきたい本を5冊紹介します。ここでは“家を建てるということは一体どういうことなのか”をおぼろげに掴むことを目的とします。常識の嘘や、いらない先入観や中途半端な知識をまず一旦かなぐり捨てて、この5冊を哲学的に読むと、自分の建てる家に対する“構え”のようなものができると思います。

3『それでも建てたい家』 宮脇檀著:新潮社
イヤと言うほど注文住宅をつくってきた建築家の視点から、ホンネの家づくりが語られる。建築家というのが、どんな視点でものを見る、どういう種族の方々なのかということが分かる一方で、むしろ“施主”(建築家に設計を依頼する私たちの方)というのは“どんな種族の人でありがちなのか”が浮き彫りにされる。
4『わが家の新築奮闘記』 池内了:晶文社
宇宙物理学者である著者が、一から家を建てる過程をドキュメントしている。結局どんな家をどんな予算で建てたのかという実際の間取りとかかったお金の話は最後までないのだが、家を建てる過程で、施主はどんなことを考え、どんな葛藤を経験するのか、夫婦の意見の相違はどの辺に生まれるのかシミュレーションすることができる恰好の教材。太陽光発電や雨水利用、自然素材の活用などをファッションとしてただ取り込むのではなく、科学している。最後は余った北山杉で愛犬“マダム・ポアロ”邸までが完成しメデタシメデタシ。
5『本気で家を建てるには』 村瀬春樹:新潮社
「月刊ハウジング」(リクルート発行)の「住宅批判宣言」をもとに書き下ろされた。エッセイ部分はもちろんサビが効いているのだが、各項に加えられた データ部分がなかなか客観的で参考になる。
6『木のいのち 木のこころ』 西岡常一著:草思社
薬師寺などの再建や改修を手がけた“最後の宮大工棟梁”として有名な西岡棟梁が“木”と“建築”について、自らの人生の来し方を織りまぜながら語りお ろす。子供の教育論としても読める最高の哲学書。いわく「(世の親は)この子は頭が悪いから大工にでもしましょ、てなことを言いまっしゃろ。それは考え違いでっせ。初めから自分で学ばなならんのです。出来が悪かったら、まあ学校にでも行って、会社に入ったほうがいいですな。組織のなかやったら少しばかり根性なしでも首をすくめていたら何とかなるでしょ」「均一の世界、壊れない世界、どないしてもいい世界からは文化は生まれませんし、育ちませんわな」
「(学者の方々は)体験や経験を信じないんですな。本に書いていることや論文の方を、目の前にあるものより大事にするんですな」
痛烈な現代文明批判でもある。
7『住まいと暮らしの文化考』 古舘晋・隅野哲郎:大阪ガスエネルギー文化研究所



 というところまでで、自分自身の“住まいに対する構え”が定まってきたら、具体的に基本設計に入りながら、次の3冊のような具体論を読みます。具体的なケースやノウハウに関する本は3冊も読めば十分だと思います。それ以上読み漁ってもキリがないし、だんだん混乱してくるのです。第一、つくろうとするのは、誰かの人生を営むのにピッタリはまった“他人の家”ではなく、自分と家族の特有の人生を時とともに刻み込むための“自分の家”なのですから。結局私の結論は、「最初につくり過ぎてはいけない」……でした。

8『間違いだらけの住まいづくり』 吉田桂二著:彰国社

9『マンガ はじめての家づくり』 村瀬春樹・中尾佑次:講談社

10『家づくり その前に』 女性建築技術者の会著:三省堂

 これらは同じ著者による住まいのプラン集「ダイニング&キッチン」女性建築技術者の会著:(財)経済調査会のシリーズ。他に「サニタリー」「子供部屋」「収納スペース」など、女性建築士が設計した住まいのプラン集だ。間取り図のように上から見ただけでは分からないような空間構成上の様々なアイディアを豊富なイラスト入りで紹介している。
 私は図書館でこの本のシリーズを見つけたのだが、ナルホド!と思ったところに付箋を貼ってコピーし、アイディアを妻と共有する方法を採った。写真で見るとインテリアのデザインにダマされやすいものが、シンプルなイラストだと、かえって空間の活かし方をより素直に把握できるように思う。綺麗に見えるものには嘘がある。
 なお、どうしても3冊の本しか読む時間がないと言う忙しい人のためには、私は上記の本のうち、次の3冊をお奨めしよう。


『「家をつくる」ということ』(藤原智美著:プレジデント社)
『それでも建てたい家』(宮脇檀著:新潮社)
『木のいのち 木のこころ』(西岡常一著:草思社)

[転職しようと思ったときに読む本]〜仕事の本質を考える10冊
1『ピーターの法則』 L・J・ピーター著: ダイヤモンド社
「パーキンソンの法則」と並んで有名な法則。組織に属していると偉くなるほどマネジメント上の無能をさらけ出すリスクが高まるので、“創造的に”無能を装って現場に留まりハッピーに仕事をし続けることを説いている。私の「処生術〜アール・ド・ヴィーブル」の精神にも通じる古典的な一冊。
2『たった一人が世界を変える』 轡田隆史編:同朋舎
新聞配達の仕事をする男がひとり谷津干潟のゴミ拾いを始め、来る日も来る日も流木やゴミで汚れた浜を片付け続けた結果、誰からも見捨てられていた干潟に野鳥が再び帰ってくる。やがて地域の住民にもゴミ拾いの輪が広がり“生きた”干潟に甦った浜は「ラムサール条約」によって自然保護区に指定される。
3『自由からの逃走』 エーリッヒ・フロム著:東京創元社
通常私たちは、現在の会社の束縛や上司の無能や同僚の嫌がらせや、あるいはルーティンワークのつまらなさや毎朝の通勤ラッシュのムカツキから逃れるために、いいかえれば“自由になるために”会社を辞めたり転職したりする。が、そうして自由な身となったあとの孤独と恐怖については考えもしない。自由というものの恐怖がファシズムを生む結果につながることもある。
4『ぼくは くまのままで いたかったのに……』
  J・シュタイナー文 J・ミュラー絵:ほるぷ出版
子供のために描かれた絵本なのに、なぜかサラリーマンを長く続けて自分を見失ってしまった私がふと我に返ることができた本。小さな子どものいる人は夜傍らに寝る子に読み聞かせながら、自分自身に読み聞かせてあげるといい。
5『蕎麦打』 加藤晴之著:筑摩書房
イタリアはジウジアーロのオフィスでデザインを学び、ソニーのプロフィール(TVディスプレイ)の開発に参加後、突如として一介の“蕎麦打ち”になった著者のドキュメント。私の友人でもあるのだが、最近はとんと蕎麦も打っていないらしい。しばらく“波動”の世界に熱狂したあと、どうしているだろうか。
6『夜の旅人』 阿刀田高著:文春文庫
ある実業家が“ゲーテ”と出会い、人生の目的が金儲けから転じてゲーテの残したものの追求になってしまう話。自分の開発した商品の行商のついでにゲーテ作品の名の付いた喫茶店のマッチからドイツで上演された戯曲のシナリオまで日本中を探し歩く旅をした実在の人物の小説化。粉川忠氏の人生の足跡はいまも、王子の丘の上に東京ゲーテ記念館として残る。私はリクルート事件のマスコミによるバッシングがピークの時に粉川氏を訪ねたのだが、「こんなことで負けちゃあいけませんよお。あなたの仕事は次の時代を拓くのに大事なんだから」と一貫して励ましていただいた思い出がある。
7『主婦会社』 下田博次著:コスモの本
主婦が自分の思いを素直にカタチにして起業する時代。ボランティアでのリサイクルが高じて地球環境と共生を考えるリサイクル会社になってしまったり、自分の息子のための教育をまじめに考えた末に自分で学校を設立し校長になってしまったり。男(特に日本の官僚や自分自身に生きてる実感のない企画系の人々)はとかく“ベンチャー”などという無理のある言葉で抽象的な起業を語りがちなのだが、女はもっと素直に、もっと力強く現実的なものを起業しているのです。
8『自動起床装置』 辺見庸著:文芸春秋
芥川賞だか直木賞だか忘れたが、辺見氏のデビュー作ではなかったか? ただ単に“朝早く人を起こす”という単調な仕事に潜む“底知れぬ奥行き”を、見事に描ききった作品。
9『興信所』 露木まさひろ著:朝日文庫
表があれば裏もある。人間の裏側の人生や素行を調査する仕事の、オモロさと悲しさの実際を描く。自分自身のことを調査して欲しいという依頼人が後を絶たないほど、一人一人の存在感が希薄になってしまった現代。「興信所」(=探偵社)はいま、ファッションかもしれない。
10『ゴミ屋の記』 木村迪男著:たいまつ新書
表があれば裏もある(Ver.2)。私はこの業に計り知れない将来性を感じる。

[子供が小学校に入ったら読む本]〜日本の教育を考える10冊
1『最初の選択』 鳥居晴美著:悠飛社
 ※鳥居さんについては【よのなかのおとなたち】のコーナーで詳しく紹介しています。
長男にとって理想的なファーストスクール(幼稚園)を探し歩いた末に結局見つからず、自分でつくってしまった母親のドキュメント。ユニダ・インターナショナル・スクール設立から子供地球基金というNGO誕生まで、母はここまで強くなれる。
2『あなた自身の社会〜スウェーデンの中学の教科書』 川上邦夫訳:新評論
スウェーデンの中学校では“社会科”をこのように教えている。事件を起こして裁判を受けるケーススタディやホモ・セクシャルに関する解説など、中学生を一人の個人として自立させようとする意欲が感じられる。私はこの本に刺激を受けて「よのなか」(筑摩書房)の第2弾でもある「ルールズ」(仮題)を著した。
3『0(ゼロ)の真ん中』 時任三郎:主婦の友社
タレント本だと思って読んだ人は、この人物のバランス感覚と自然や人間に対する素直な感性に圧倒されるだろう。子供を生み育てることについても、超多忙の著者がニュージーランドで家を借りてまで自然分娩に立ち会う様が描かれる。3人の子の出産に立ち会い、次男は助産婦だけで長男も見ている前で家庭分娩、長女にいたっては自分で取り上げてしまった経験を持つ私は十分に共感できた。なお、時任氏は自ら「SUBNET」というサイトを制作・管理している。
4『学校を基地にお父さんのまちづくり』 岸裕司著:太郎次郎社
公立の小学校の教育に、地域社会、特にお父さんたちがどう貢献できるのか、秀逸な具体例を示したヒューマン・ドキュメント。やはり教育委員会とのゴタゴタはあったらしいが、学校が校長のリーダーシップで地域に向かって開いていけば、父兄や地域住民の生涯学習もからめて、大人と子供がともに学べる学習センターになれる可能性を示している。「親の学ぼうとする姿そのものが、子供にとって最高の教材だ」という言葉が印象的。ちなみに、この学校の“ウサギ小屋”も“図書館”も、お父さんたちのボランティアで子供達と一緒になって造られた。
5『バイキンが子どもを強くする』 藤田紘一郎著:婦人生活社
バイ菌や雑菌を過剰にまで排する世の中の傾向が、逆に子供達に本来備わっている抵抗力や生きるチカラを弱めてしまっていることを指摘している。回虫が子供達のお腹からいなくなって、アトピーなどのアレルギーが増えてきたことをデータで示しながら、親たちの過剰な清潔癖に対して警告する。著者は自ら、お腹に住むサナダムシの“キヨミちゃん”とともに健康に暮らしているそうだ。
6『子どもたちはなぜキレるのか』 斉藤孝著:ちくま新書
教育改革の方向性については、とかく総合学習などの余裕のある時間設定や創造性重視の柔軟なプログラム改正が叫ばれるが、著者は、日本の社会が戦後一貫して家庭でも学校でも失ってきた正しい“身体”マネジメント教育の復興を説く。日本固有の“腰肚文化”(はらをくくる、はらを据える、腰がすわる、腰を落ちつける)と胆力、根気の関係を説き、身体性から“生きるチカラ”を評している。
7『なみにきをつけて、シャーリー』 ジョン・バーニンガム作:ほるぷ出版
親と子がいかに血のつながったもの同士でも、どんなに「あの子のことは私が一番よく知っている」と思っても、目の前にある現実をどんなに違った感性で、それぞれがそれぞれの脳に刻み込んでいるかがわかる本。「ひとはみな、違う現実を生きている」ことがやさしくわかる絵本。
8『人間を幸福にしない日本というシステム』
  カレル・ヴァン・ウォルフレン著:毎日新聞社
みんなわかっているのだが、“外人”に改めて言われないとわかった気がしない。「わかっちゃいるけど、やめられない!」という誰かの鼻歌が聴こえる。
9『ダウン症の子をもって』 正村公宏著:新潮社
イタズラ盛りの子をもつ親は、本当に疲れるもの。ときにはコップに八つ当たりして台所のシンクに投げつけて割ってしまいたいこともあるし、ちょっくらキレてしまって、思いきり息子の尻をひっぱたくときもある。しかし、このドキュメントの親よりは、楽なのだろうと素直に思う。こんな風だったら、自分は果たして耐えられるだろうか。逆に、健常なことでかえって親子の絆が薄まってしまっているのが、現代の親子の問題なのかもしれないとも思えてくる。
10『きのくに子どもの村』 堀真一郎著:ブロンズ新社
こんな学校があっていいのだろうか。文部省や教育委員会は認めるのだろうか。続けていくことは可能だろうか。あらゆる疑問が湧いてくる。だから私は実際に妻をともなって、和歌山の田舎を訪れた。学年をつくらず縦割りでテーマ別に構成されたクラス。“工務店”組は来る日も来る日も校庭に来客用のレストラン棟を建築しながら、その設計を通じて幾何や数学を、材料の買い出しで社会を、加工で理科を、建築日誌で国語を、自分のものにしてゆく。先生は地元の大工さんだ。さて、どんな大人が育つのだろうか? 答えはまだ出ていない。

[親が寝たきりになる前に読む本]〜老人介護と医療福祉を考える5冊
1『ボケません 私の老後』高槻絹子著:こうち書房
浜松医療センターで開発された“浜松方式”を紹介。「かなひろいテスト」でボケの段階を知る方法の他、前頭葉の機能にかかわる生きがいと感動がボケを防ぐと説く。初老期のうつ病については、周りのものがあまり励ましてはいけないというような豊富な経験にもとづいた知恵が光る。
2『どないしましょ、この寿命』 春山満著:一世出版
 ※春山さんについては【よのなかのみらい】のコーナーで詳しく紹介しています。
24歳で難病筋ジストロフィーを発症し、30歳から車椅子の生活を続ける著者はいま、8億円の売上を上げるベンチャー企業の社長だ。お年寄りの介護を楽にするための“介護する側に立った”商品を開発し続ける一方、「介護保険は日本をどう変えるか」をテーマに歯に衣着せぬ直言で日本全国を行脚する。私たちの生活とダイレクトに結びついた、医療・福祉・介護という世界の真実がここにある。もう、他人事では済まされない。
3『駅と車椅子』 近田洋一著:晩聲社
車椅子の著者が、再開発される駅の誰とも言われぬ奇妙な主体と交渉しながら自分たちの要望を通してゆくドキュメント。インターネットがあったら、東芝のケースのように、煮えきらない駅と行政側の発言の録音テープがネットを駆けめぐっていたかもしれない。わが子を虐める同級生をWEB上で退学させて欲しいと訴えた父親のように、責任者を辞職に追い込めるのかもしれない。かつて発言力がないか、極端に小さいと思われていた人たちのチカラについて、改めて考える一冊。
4『黄落』 佐江衆一著:新潮社
母親が家の中で転んで骨を痛めてしまってから寝たきりになるドキュメント小説。ここまではよくある話(老人が寝たきりになる原因のトップに家の中での転倒事故がある)なのだが、この物語はここからが怖い。母は、自分の老いと連れ合いの不甲斐なさと息子たちの負担を冷静に秤に掛けて、ある決断をする。決然と、それを実行する。あまりにもホンネ過ぎて耐えがたいほどなのだ が……でも、これが現実。
5『長い長いベッドカバー』 シルビア・フェア作:セーラー出版
寝たきりになって長い長いベッドの両端に暮らす、おばあさん姉妹の物語。2人はいつも性格の違いからいがみ合って生きてきたのだが、ベッドカバーに刺繍をするという初めての共同作業を通じて、お互いの人格を改めて発見しあう。この絵本を読むと、私の脳裏にはどうしても日本の老人ホームの姿がよぎる。

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