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| 第1回コラム:テリー伊藤氏 |
![]() 意外に思われるかもしれないが、私は番組の撮影終了後などに行われるタレントさんたちとの飲み会には一切顔を出さないようにしている。だから、この『処生術』に書かれている項目のひとつ、「“早引けの術”で宴会を中座する」については、すでに免許皆伝と勝手に思っている。著者の藤原和博さんも社内の宴会のときに、「今夜は妻と食事しなくてはならないから」などと言って、何のためらいもなく席を立つことができるという。しかし、普通の会社勤めをしている人が、藤原さんのように宴会の最中に「僕、帰ります」と言うことができるだろうか? この本には、「“公私混同の術”で仕事を選ぶ」とか「会議が仕事の“評論の人” には近づかない」「オイシイ思いをするだけで幸福になれるか」など仕事場や家庭で の新しい提案が40項目以上並んでいる。これをすべて実践するのは困難なことだと思 う。ではどうすればいいのか? ヒントをお教えしよう。発想を変えて、この本のラ イフスタイルを実践するためには、どのくらいの年収があればいいのか、と考えてみ る。藤原さんは手取りで800万円、税込みで1200万円と書いているが、読者の中に は税込みで400万円の人もいらっしゃるだろう。そういった場合は、この本の1/3を 目安に実践する。つまり、やらなくてもいい項目が20いくつあると思えばいい。そう いった気持で読むと、楽になれるかもしれない。 藤原さんの『処生術』の中で、特に私が参考にしようと思っているのは、「履歴書 には運動エネルギーを書き連ねる」という項目だ。藤原さんは「男は常に履歴書を書 くべきだ」と説く。この中で実は二つのことを言おうとしているのではないか。ひと つ目は、履歴書を書くことで、自分のいままで生きてきた人生に対する責任を考える こと。そしてもうひとつは、今の生活にすがらないこと。 「処生術」といいながら、いつでも会社を辞めてもいいという気構えを持てと言っ ている。履歴書を一枚書くことで、新しい価値観が生じるわけだ。私はこの履歴書を 書く効用を、特に官僚たちにお勧めしたい。現在の日本の官僚制度は、点数がいい人 だけが受かるというシステムになっている。履歴書を書いてみることで、官僚たちも 柔軟性を養うことができるのではないか。 また、「テレビをどうかして自分自身の鑑定目を養う」にも心を動かされた。これ は、メディアなどからだれよりも早く情報を手に入れることは正しい、と教えられた 人には厳しい注文かもしれない。テレビが突然なくなってしまうのは怖いことだ。し かし、テレビがなくなったって、何かほかのものが生まれてくるものだという。確か に人間とはしたたかだから、何かをなくすと新しい何かを探し出すことができるはず だ。テレビで仕事をしている私が言うのだから間違いない。 藤原さんはあのリクルートという生存競争の激しいところで、モーレツ・サラリーマ ンの経験をしている。この本とまったく違う生活をしている。私は逆に、だからこそ、この本を書けたのではないかと思っている。しかし、そういった生活をしたことのない人にこの本を理解させるのはキツイという気もしないでもない。社会に出た経験のない若い学生たちに「これを読め」と勧めても、「あんた、オレにいきなりヘルシーな料理を食わせるのか」と言われるのがオチだろう。「ステーキを食べさせてくれてから言ってくれ」と文句を言われるかもしれない。しかし、私は「とにかく読め。その後にステーキを食え」と言いたい。 というのも、私たちトウが立った世代では、この本に書いてあるほとんどを実現す ることはできないと思うからだ。将来の社会人たちにこそ実践してほしい。藤原さん がこの本を書いたのは、二年間、ロンドンとパリで生活した間の息子さんの言動を記 録し続けたのがきっかけだという。この本に書かれてあることは、未来からのメッセージかもしれない。 この本を読んでいると、会社での生き方、家庭での過ごし方、そして子供の教育論 など日本人が長い間持っていた固定概念や価値観が一転する。まさに21世紀のサラリーマン、いや日本人のバイブルになるかもしれない。文部省はこの本を道徳の教 科書として採用したらどうか。 (てりー・いとう テレビプロデューサー) |
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